- 「キスをしたら歯周病がうつると聞いたけど本当?」
- 「ペットを飼っているけど歯周病になるの?」
このような疑問を感じている方はいらっしゃいませんか。
歯周病は歯科疾患のなかでも歯を失うことが一番多くて感染者率も高い、怖い病気です。
歯周病は、お口の中にいる細菌によって炎症が引き起こされ、歯の周りの組織を壊してしまいます。例えば、歯茎が腫れたり、出血や膿が出たり、骨を溶かしたり…最終的に、歯を支える骨がなくなると歯がグラグラしてきて抜け落ちてしまいます。
歯周病は「お口の中の細菌によって起こる」のであれば、接近することの多い恋人や夫婦・親子間などで、細菌が感染することもあるのでしょうか。
できることならば、歯周病菌をうつしたりうつされたりはしたくないですよね。
そこで今回は、歯周病の感染を防ぐ方法を知りたい方のために「歯周病は人やペットにうつるの?」という内容で、よくある感染経路や潜伏期間や予防策についても解説します。
歯周病は人やペットにうつるの?
家族のだれかが歯周病にかかっていると、日常生活のあらゆる場面で歯周病をうつしてしまうリスクが増えるとされています。(梅田 誠.歯周病原細菌の親から子への伝播について.日本臨床研究.2008;3:66-72)
家族のお口の中から歯周病の細菌が遺伝子型の一致が認められたといった研究もあり、家族のお口の中の状況は似る傾向にあるようです。
また、歯周病は人間だけではなく動物も起こります。
そのなかでも犬は、歯周病の発症リスクが高く、プラーク(歯垢)や歯石の付着が多々みられます。
特にペットは痛みを訴えることができず、プラーク(歯垢)や歯石を取り除くのが難しいため、重症化するケースも少なくありません。
ということは、動物から人へ、人から動物へと感染してしまう可能性は否定できないでしょう。
歯周病のよくある感染経路は?
家族内感染は「垂直感染」と「水平感染」があるといわれています。
垂直感染(親子間)
垂直感染とは、親子間のことを指します。母親が 5.5 mm 以上の深い歯周ポケットを持っている場合、その子どものお口の中から、歯周病菌である T. forsythia(Bacteroides forsythus)の検出が多く見られたと報告されています。
また別の研究では、重度の歯周病に影響がある細菌を母親が持っていると子どもからも同じ細菌が検出されるといったものもあります。
特に女性は、月経や妊娠、思春期などでエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが日々増減しています。これらは歯周病菌の増殖を引き起こして、歯ぐきに炎症を起こしやすい環境をつくります。閉経したあとはエストロゲンが少なるため、歯を支える骨が吸収し、歯周ポケットが深くなりやすいことも言われています。女性は生涯を通して歯周病のリスクが高いので注意が必要です。
水平感染(夫婦間)
水平感染は配偶者を指します。配偶者間での研究でも P. gingivalisという歯周病の細菌がうつり、感染したといった報告があります。
以上のことから、考えられる感染経路は「スキンシップをとる機会の多い家族から」が考えられるようです。ということは、ペットとも似たような環境にあるため、同じことが言えます。
家族同士での歯ブラシの共有は避けるべきですが、食器を共有しないなど過度なことはする必要ありません。食事をともにしない生後4ヶ月の時点で母親の口腔細菌が子どもに伝播していることが確認された研究があり、日々の生活で唾液に接触していることがわかっているからです。
(資料)乳幼児期における親との食器共有について – 一般社団法人日本口腔衛生学会
歯周病菌の潜伏期間
潜伏期間とは、感染してから症状が出現するまでの期間のことを言い、風邪などのウイルスの場合によく用いられます。
しかし、歯周病の場合は「潜伏期間」といった表現はあまり適さないかもしれません。
なぜならお口の中には800種類ほどの細菌が存在していて、家族間で細菌叢が類似することもあるとはいえ、同じ細菌がいたとしても歯周病が発症するかどうかは人によって異なるからです。
歯周病は、歯磨きが不十分だったときに歯の表面に付着した細菌が増殖し、細菌性のプラークが形成されることからはじまります。
歯磨きなどで徹底的にプラークを除去することによって、歯周病が発症せず、たとえ発症しても改善させることができます。
相手へうつしてしまうリスクを下げるために、まずは歯磨きをしたり、歯周病の治療を受けたりなど、ご自身のお口の環境を整えることは大事ではあります。
…が、実際に歯周病を発症させるかどうかはその人次第ということです。
歯周病をうつさないための予防策
歯周病をうつしたり、うつされたりしないための予防策は、3つ挙げられます。
歯磨きをする
先ほどもお伝えしたように、歯周病の原因はプラーク(歯垢)です。
毎日行なう歯ブラシが基本となり、お口の中の状況に応じて歯間ブラシやデンタルフロスなどの補助清掃用具、電動ブラシを上手に活用してみてください。
歯磨きをしてお口の中を清潔にすることで悪さをする歯周病菌が少なくなり、歯周病の感染リスクを下げることができます。
生活習慣を整える
また、歯周病に影響を与える因子として、喫煙やストレスの刺激、糖尿病、肥満などがあります。
これらがあると歯周病に罹患しやすいことが報告されています。
特に喫煙は最大のリスクファクターで、非喫煙者よりも2~8倍歯周病にかかりやすいと言うデータも。
歯周病の危険を防ぐためにも家族全員で生活習慣を整えていくことが予防策のひとつです。
歯医者に行く
歯周病はサイレントディジーズ(Silent Disease:静かな病気)とも呼ばれていて、重症化するまで気が付きにくいと言われています。
特に問題がないと思っていたとしても、現在の状態を診査診断してもらうために早めの受診をオススメします。
また、歯磨きだけでは取れない固くこびりついたプラークや歯石、その他の沈着物などを歯科医院にて徹底的に除去してもらい、再び付きにくいようにツルツルの歯面にすることも大切。
歯の形態異常や不適合な被せ物があってもプラークが停滞してしまう原因となるので、それらも含めてチェックしてもらってください。
歯周病は4,50代など年齢があがるほどリスクが高くなりますが、先天的因子として低年齢からはじまる場合や、侵襲性歯周炎という予後不良のものなど人によってさまざまです。
ご自身がどんなリスクを持っているのか、歯医者さんで診てもらい予防していくことが重要です!
…ということで、歯周病は家族間での感染の可能性は考えられるものの、しっかり対策をすれば予防できます。
なにか気になることがございましたら、当院までお気軽にご相談ください。
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