歯の健康と食生活の密接な関係について

その他

歯の病気は「むし歯」と「歯周病」の2大疾患。

なかでも特にむし歯は、食生活の影響をダイレクトに受け、関係が深いとされています。

むし歯を予防したいのであれば、食生活を見直すことが大前提。

そこで今回は「歯の健康と食生活の密接な関係」について、深堀りしていきます。

むし歯と食生活の関係

「甘いものを食べても歯磨きさえちゃんとすれば、むし歯は防げる」と考えることもありますよね。しかし、残念ながらそうは言えないのが現実です。

歯磨きで甘いものを食べたことはリセットできません。それはなぜなのでしょうか。

むし歯は多因子性疾患

むし歯はさまざまな要因が複雑に絡み合って発生する「多因子性疾患」だからです。

特定の原因菌で発生する感染症ではありません。

以前むし歯は、特定の菌に砂糖を与えるとむし歯になることから「ミュータンスレンサ球菌の特定の菌と砂糖」が原因と考えられていました。

ところが、2000年ごろに「生態学的プラーク仮説」という考え方が出てきたのです。ミュータンス菌に限らず「プラーク構成細菌が発酵性炭水化物から代謝産物として酸を産生してむし歯が起こる」と、これまでの病院論に異論を唱えました。むし歯はお口の中のさまざまな常在菌が関わりながら、バイオフィルム中の環境の変化によって起こる「非感染性疾患」なのです。

プラークの構成細菌が影響するなら歯磨きで取れるのでは?と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、歯は複雑な形態をしていて歯ブラシの毛先が入り切らない小さな溝があります。

細菌は歯ブラシの毛先よりも小さいので、そこまでブラッシングをすることは不可能なのです。

また、むし歯の病院論を示すモデルには「Fejerskov(フェジェルスコフ)の輪」があります。外側の円に記載される社会環境要因(社会的地位、教育、収入)や、保健行動要因(知識、健康観、習慣)が、内側の円に記載されている歯・細菌・唾液・飲食物・フッ化物の相互作用の結果として、むし歯の脱灰・再石灰化のメカニズムに影響を与えていることが示されています。

このように、むし歯は「生活習慣」や「外部環境要因」も関与することが明らかにされ「むし歯は非感染性疾患である」と言われるようになりました。

発酵性炭水化物でむし歯になる

「むし歯の原因は砂糖である」と認識している人がほとんどですが、細菌が酸を賛成するための原料は「発酵性炭水化物」です。

砂糖ではなくても、炭水化物が含まれる食事で酸が産生されて、むし歯が起こります。

だからといって炭水化物を抜くことはできないですよね。

よって「食事の内容」や「食事の摂り方」が大切になってきます。

ステファンカーブについて
ステファンカーブとは、プラーク中の酸性とアルカリ性の度合い(pH)を表したグラフです。普段のお口の中はpH7の中性に保たれていますが、食べ物がお口の中に入ると酸性に傾きます。pH5.5以下になると歯の脱灰(だっかい)が始まります。脱灰したからといってすぐに歯に穴があくわけではなく、唾液の力や歯磨きなどによって再石灰化が起こり、中性へと戻していきます。

しかし、ダラダラと食べ物や飲み物を摂取していると酸性の状態が続き、脱灰と再石灰化のバランスが崩れて「むし歯」になってしまうのです。

むし歯になりやすい特徴

むし歯になりやすい特徴は下記のことが考えられます。

  1. 間食に砂糖を含む食品をとるとむし歯が増える
  2. 間食の回数が増えるとむし歯が増える
  3. 特に口に残りやすい食品は危険

同じ炭水化物でも、お口に残りやすくダラダラと食べてしまうキャラメルや飴、グミなどの「お菓子」はリスクが高く、決まった時間に限られた時間で、よくかんで食べるお米などの「食事」はリスクが低めです。

歯科衛生士 本吉
歯科衛生士 本吉

食事でもあまりかまずに食べられる菓子パンよりは、おかずと一緒に食べるお米のほうが栄養バランスも上がり、むし歯リスクも低いでしょう。

また、間食を2回取る場合、1回目に「ドーナツと緑茶」2回目に「するめとオレンジジュース」とすると、間食のたびに脱灰が起こりますが「ドーナツとオレンジジュース」と「するめと緑茶」の組み合わせにすれば、間食しても脱灰は「ドーナツとオレンジジュース」の1回だけ。

デザートを3時のおやつに間食として別で食べるよりも、食後のデザートで一緒にとったほうがむし歯のリスクは減ります。よって、何をどのように食べるかが重要なのです。

もちろん、子どもの場合は、一度にたくさんの量を食べられないので「補食」として栄養を摂取することも大事。

そのときには「間食の内容」を考えてみてください。

お口の中や環境、状況は患者さんによって違うので、できることもご家庭や個人それぞれになります。

当院では、個々に合ったアドバイスを行っていますのでご安心ください。

歯周病と食生活の関係

一方、歯周病の原因は「プラーク」です。プラーク中には何億といった細菌がいて、炎症を引き起こします。

歯周病では何より「歯磨き」が大事になりますが、リスクファクターのひとつとして食生活があげられます。

歯周病と全身疾患の関係

歯周病は、呼吸器系疾患・心疾患・糖尿病や妊娠などの全身疾患との関連性が指摘されています。

そのなかでも糖尿病との関連は深く、糖尿病は歯周病を悪化させる大きな原因です。

糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。2型の糖尿病は食生活の乱れからくることがわかっていて、食べ過ぎで肥満になるとインスリンが働きにくくなってしまいます。

全身疾患を予防するのに食生活は重要で、それらが歯の健康にも繋がっています。

「メタボリックドミノ」
メタボリックドミノとは「メタボリックシンドローム」をきっかけにドミノ倒しのように病気が続いていくことを表したものです。

メタボは、内臓脂肪型肥満を前提として、脂質異常、高血圧、高血糖のいずれか2つ以上を合わせもった状態を言います。

メタボが進行すると、ドミノ倒しのように高血圧や糖代謝異常などが起こり、次いで動脈硬化、虚血性心疾患や脳血管障害、最終的には心不全や脳卒中、腎不全などの重大な病気が引き起こされます。

そして、病気のスタート地点にいるのが、生活習慣病の「むし歯」や「歯周病」なのです。お口はからだの入口で、全身の組織に影響を与えてしまうことが考えられています。

メタボは偏った食生活や運動不足、睡眠不足、ストレスや喫煙などが原因です。食生活を整えることでむし歯や歯周病以外にもあらゆる病気を予防できることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

食習慣による歯への影響

むし歯や歯周病のほかにも、下記のことが食生活と関連しています。

  • 着色のつきやすさ
  • 歯の形成、歯質の強さ
  • 顎の発達や歯並び
  • QOLの向上…など

妊娠期、乳幼児期、学齢期、成人期、高齢期によっても問題が異なり、歯科疾患の特徴はそれぞれ。年齢ごとに食生活や環境も変わっていきますよね。

患者さんのご要望や生活環境をできるかぎり理解してお話ししていきますので、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきましょう。

なにか気になることがございましたら、当院までお気軽にご相談ください。

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