お口ポカンの原因と改善トレーニング(家庭でできる口腔筋トレ)

小児矯正

「うちの子、テレビを見ているときにいつも口がポカンと開いている……」
「指摘してもすぐにまた口が開いてしまう」

そんなお悩みを抱える保護者の方は、決して少なくありません。実は近年、この「お口ポカン」が子どもの歯並びや全身の健康に思わぬ影響を及ぼすことがわかってきており、医学的にも注目されています。

佐久間院長
佐久間院長

今回は、見過ごされがちな「お口ポカン」について、原因からご家庭でできる改善トレーニングまで解説します。

この記事を読み終える頃には、お子さんのお口ポカンに対して「今日から何をすればよいか」がはっきりとイメージできるようになります。

ぜひ最後までお読みください。

「お口ポカン」は日本の子どもの約3人に1人

「お口ポカン」は、専門的には「口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)」と呼ばれます。食事や会話をしていない安静時にも口が開いたままになっている状態のことです。

【知っていますか?】日本の子どもの30.7%が「お口ポカン」

2021年、新潟大学の研究グループが日本で初めて全国規模の疫学調査を実施しました。その結果、3〜12歳の子ども3,399名のうち、約30.7%が日常的に口が開いた状態(口唇閉鎖不全)であることが明らかになっています。さらに、年齢が上がるほど有病率が高くなる傾向も示されました。

出典:新潟大学プレスリリース「子どものお口ぽかんの有病率を明らかに」(2021年)

つまり、クラスに約10人いれば、3人はお口ポカンの状態ということです。「うちの子だけかな?」と心配されている方も、実は多くのご家庭が同じ悩みを抱えています。

そして大切なのは、お口ポカンは自然には治りにくく、放置することで歯並びや全身の健康にまで影響を及ぼすという点です。

お口ポカンの主な5つの原因

お子さんがお口ポカンになる原因はひとつではありません。複数の要因が重なっていることも多いため、まずは原因を知ることから始めましょう。

原因①:口周りの筋力不足

最も多い原因が唇や舌の筋肉(口輪筋・舌筋)の発達不足です。

現代の食事は柔らかいものが中心になりがちです。

一説では、伝統的な和食では1食あたり約1,500回噛むのに対し、ハンバーグやオムライスなどの洋食中心の食事では約500回程度と、噛む回数が3分の1にまで減っていると言われています。

また、シャボン玉や風船、口笛、吹き戻しなど、昔は当たり前だった「口を使う遊び」の機会も激減。

実際に、約2人に1人の子どもが風船を膨らませられないというデータもあるほどです。

原因②:鼻づまり・鼻呼吸の障害

アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで慢性的に鼻が詰まっていると苦しくて鼻で呼吸ができず、自然と口呼吸になります。

特に注意したいのが「アデノイド肥大」です。

アデノイド(咽頭扁桃)は鼻の奥にあるリンパ組織で、2歳頃から大きくなり始め、6歳頃にピークを迎えます。

これが大きすぎると鼻の通り道を塞ぎ、口呼吸の原因となります。

原因③:歯並び・噛み合わせの問題

すでに歯並びに問題がある場合、物理的に口が閉じにくくなっていることがあります。

  • 上顎前突(出っ歯):前歯が前に出ているため唇が閉じにくい
  • 下顎前突(受け口):下顎が前に出て噛み合わせが反対になっている
  • 開咬(かいこう):奥歯を噛んでも前歯が閉じない

これらは「口が閉じにくい→口呼吸になる→さらに歯並びが悪化する」という悪循環を生みやすいのが特徴です。

原因④:口腔習癖(くちのくせ)

長期化した指しゃぶり、爪噛み、唇噛み、舌を前に突き出す癖(舌突出癖)なども、唇や舌の正しい使い方を妨げます。

また、スマホやタブレットを長時間使う際の前傾姿勢・猫背も、気道を狭くして口呼吸を誘発する要因として近年注目されています。

原因⑤:舌小帯短縮症などの解剖学的な問題

舌の裏側にある「舌小帯(ぜつしょうたい)」というスジが生まれつき短いと、舌の動きが制限されて正しい位置に収まらずお口ポカンの原因になることがあります。

この場合は歯科での評価と適切な対応が必要です。

30秒チェック!お子さんはお口ポカン?

ご自宅で簡単にできるセルフチェックをご紹介します。お子さんが遊びやテレビに集中している時にこっそり観察してみてください。

【お口ポカン セルフチェックリスト】

  • 集中しているとき、口が30秒以上開いている
  • 寝ているときに口が開いている、いびきをかく
  • 唇がいつも乾燥している、上唇が白っぽくなっている
  • 朝起きたときに喉が乾燥している、口臭が気になる
  • 食事中にクチャクチャと音を立てて食べる
  • 滑舌が悪い、発音が不明瞭
  • 風邪をひきやすい、鼻づまりが続いている
  • 歯並びが気になる、前歯に着色汚れがつきやすい
  • 姿勢が悪く、猫背になりがち

3つ以上当てはまる場合は、お口ポカンの可能性が高いと考えられます。

鼻呼吸できているかのチェック方法

お子さんの口を軽く指でつまんで閉じ、鼻の下に指を当ててみてください。

鼻からスーッと息が出ていれば鼻呼吸ができている証拠です。

嫌がる場合や苦しそうにする場合は鼻呼吸がうまくできていない可能性があります。

舌の正しい位置「スポット」を知っていますか?

実は、リラックスしているときの舌には正しい位置があります。

舌の正しい位置(スポット)

舌先が上の前歯の少し後ろにあるふくらみに軽く触れ、舌全体が上顎にぴったりとくっついている状態。

舌が下の歯の裏側に落ちている低位舌(ていいぜつ)の状態だと、上顎の成長を促す力が働かず、歯並びの乱れや口呼吸の原因になります。

放っておくとどうなる?お口ポカンの怖いリスク

「そのうち治るかな」と放置してしまいがちですが、お口ポカンは自然には治りにくく、放置するとさまざまな悪影響が出てきます。

リスク①:虫歯・歯周病・口臭の悪化

口呼吸により口の中が乾燥すると、唾液の分泌量が減ります。唾液には以下のような大切な働きがあるため、その機能が失われてしまうのです。

  • 食べかすを洗い流す自浄作用
  • 細菌の増殖を抑える抗菌作用
  • 食事で酸性になった口内を中和する緩衝作用
  • 歯の表面を修復する再石灰化作用

唾液が減ると虫歯菌や歯周病菌が増殖しやすくなり、口臭の原因にもなります。

リスク②:歯並び・顎の発達への悪影響

歯は、外側からの唇・頬の力と内側からの舌の力のバランスが取れた位置に並びます。これをバクシネーターメカニズムと言います。

口がいつも開いていると、

  • 上唇の力が抜けて、上の前歯が前に押し出される → 出っ歯
  • 舌が下に落ちて上顎の成長が促されない → 狭い歯列、ガタガタの歯並び
  • 前歯に舌が当たり続ける → 開咬(前歯が噛み合わない)

このように、お口ポカンは将来の矯正治療が必要になるリスクを大きく高めてしまうのです。

リスク③:風邪・アレルギーにかかりやすくなる

鼻には、空気中のウイルスや異物を取り除くフィルター機能と、空気を温め加湿する機能があります。口呼吸ではこれらの機能が働かないため、冷たく乾燥した空気が直接喉に入り、感染症やアレルギーのリスクが高まります

リスク④:顔つき(顔貌)への影響

成長期に口呼吸が続くと、アデノイド顔貌(がんぼう)と呼ばれる特徴的な顔つきになることがあります。

  • 下顎が小さく後退し、二重顎のように見える
  • 顔が縦に長く間延びした印象
  • 口元が前に突き出る(口ゴボ)
  • 顎と首の境目がはっきりしない

顔の骨格は成長期に作られるため、幼少期からの対策が将来の顔立ちにも大きく影響します

リスク⑤:集中力・睡眠の質の低下

口呼吸は鼻呼吸に比べて1回あたりに取り込める酸素量が少なく、脳への酸素供給が不足しがちです。集中力の低下、いびき、睡眠時無呼吸症候群などにつながる可能性も指摘されています。

家庭でできる!お口ポカン改善トレーニング5選

ここからが本題です。ご家庭で楽しく続けられるトレーニングを、効果の高いものから順にご紹介します。

【始める前に】

  • すべて毎日継続することが大切です
  • お子さんを叱らず、「一緒にやろう!」と楽しい雰囲気で
  • 効果を感じるまで最低3ヶ月は続けましょう
  • 鼻づまりがある場合は、まず耳鼻科の治療を優先してください

トレーニング①:あいうべ体操(最もおすすめ)

福岡みらいクリニックの今井一彰先生が考案された、口呼吸改善のための代表的な体操です。保育園から小学校まで、全国で取り入れられている実績があります。

【あいうべ体操のやり方】

①「あー」と口を大きく開く
②「いー」と口を大きく横に広げる
③「うー」と唇を強く前に突き出す
④「べー」と舌を突き出して下に伸ばす(あごの先につけるイメージで)

1セット約4秒、1日30セット(朝・昼・晩の食後に各10回ずつ)を目安に行います。

声は出しても出さなくてもOK。お風呂の中で行うのが続けやすくおすすめです。お子さんと向かい合って、変顔をするように楽しんで取り組みましょう。

トレーニング②:スポットポジション

舌の正しい位置を覚えるためのトレーニングです。

【やり方】

  1. 割りばしや綿棒で、上顎の「スポット」(前歯の少し後ろのふくらみ)を3秒間ゆっくり押す
  2. 続いて、舌先で同じ場所を3秒間押す
  3. これを5回繰り返す

ポイントは、舌を丸めず、尖らせて当てること。

「ここに舌があるのが正解だよ」と、お子さんに正しい位置を体で覚えさせるトレーニングです。

トレーニング③:ポッピング(舌の弾き音)

【やり方】

  1. 舌全体を上顎にぴったりと吸い付ける
  2. 一気に舌を下に弾いて、「ポンッ」と音を鳴らす
  3. これを1日10〜20回

最初はうまく音が鳴らなくてもOK。舌の筋肉がついてくると、だんだん大きな音が出るようになります。

ゲーム感覚で「どっちが大きな音を出せるかな?」と親子で競争するのもおすすめです。

トレーニング④:ボタンプル・トレーニング

唇の筋肉(口輪筋)を集中的に鍛えます。

【準備するもの】

  • 直径2.5〜3cmほどの大きめのボタン
  • 30〜40cmのタコ糸(100円ショップで入手可)

【やり方】

  1. ボタンを唇と前歯の間に挟む
  2. 糸を前方にゆっくり引っ張り、ボタンが口から出ないように唇の力で抵抗する
  3. 30秒引っ張って20秒休むを1日3セット

※注意:必ず保護者の方が見守りながら行ってください。誤飲を防ぐため、小さなお子さんには対象年齢に注意し、必ず糸をしっかり持って行いましょう。

トレーニング⑤:楽しいお口遊びを生活に取り入れる

トレーニングと身構えなくても、遊びの中で口の筋肉を鍛えることができます

  • 風船を膨らませる:頬と唇の筋肉を一気に鍛えられる
  • シャボン玉:息のコントロールと唇の使い方が身につく
  • 吹き戻し笛(ピロピロ笛):お祭り気分で楽しく
  • フーセンガム:噛む・舌で広げる・息を吹き込むの一連の動作が効果的(キシリトール入りを選びましょう)
  • ストローで飲む・吹く遊び:飲むだけでなく、紙を吹いて動かすゲームも◎

噛みごたえのある食事を意識するだけでも、自然と口周りの筋肉が育ちます。スルメ、根菜、ナッツ類、固めのフランスパンなどを意識的に取り入れてみてください。

年齢別!お口ポカン対策のポイント

お子さんの発達段階に合わせたアプローチも大切です。

【0〜1歳】

  • 抱っこの姿勢に注意(首が反らないよう、Cカーブを意識)
  • 「いないいないばあ」で大きく口を動かす遊び

【2〜3歳】

  • 「にらめっこ」「変顔遊び」で口の表情筋を刺激
  • シャボン玉、風船、吹き戻しなど

【3〜5歳】

  • あいうべ体操がスタートできる年齢
  • 噛み応えのある食事を意識
  • 指しゃぶりは4歳までに卒業を目指す

【5〜6歳以降】

  • スポットポジションやポッピングなど本格的なトレーニング
  • 必要に応じて専門的な口腔筋機能療法(MFT)も検討

【学童期】

  • ボタンプルなどの強度の高いトレーニングが可能
  • 矯正治療と並行してMFTを行うことで、後戻りを防止

こんなときは歯科にご相談ください

ご家庭でのトレーニングは大切ですが、改善が見られない場合や、以下のようなサインがある場合は、早めの専門家への相談をおすすめします。

【歯科受診の目安】

  • トレーニングを3〜6ヶ月続けても改善が見られない
  • すでに歯並びの乱れがある(出っ歯・受け口・開咬など)
  • 慢性的ないびきや睡眠時の呼吸の乱れがある
  • 滑舌の悪さが目立つ
  • 舌小帯が短いように見える
  • アデノイド顔貌の傾向が見られる
  • 鼻づまりが慢性化している(この場合はまず耳鼻科へ)

保険診療で受けられる「口腔機能発達不全症」の治療

15歳未満のお子さんで一定の基準を満たせば、口腔機能発達不全症として保険診療で治療を受けられます。当院でも検査・トレーニング指導を行っており、ご家庭での取り組みをサポートしています。

佐久間院長
佐久間院長

「そのうち治るかな」と様子を見ているうちに、骨格や歯並びへの影響が出てしまうケースを多く見てきました。気になることがあれば、ぜひ早めにご相談ください。

まとめ:今日からできる小さな一歩を

お口ポカンは、見た目の問題だけでなくお子さんの将来の歯並び・健康・顔つきにまで関わる大切なサインです。

【この記事のポイント】

  • 日本の子どもの約30.7%がお口ポカン(口唇閉鎖不全症)
  • 主な原因は口周りの筋力不足、鼻づまり、歯並び、習癖など
  • 放置すると虫歯・歯並びの悪化・アデノイド顔貌などのリスクが
  • 家庭で「あいうべ体操」から始めるのが最も手軽でおすすめ
  • 改善しない場合は、保険適用の「口腔機能発達不全症」治療が受けられる

まずは今日、お子さんと一緒にあいうべ体操を10回だけやってみてください。毎日の小さな積み重ねが、お子さんの未来の健康な笑顔につながります

ご家庭での取り組みに不安がある方、すでに歯並びが気になっている方は、ぜひ当院の小児矯正相談をご利用ください。お子さんの状態を丁寧に診させていただき、ご家庭ごとに最適なアドバイスをいたします。


【参考資料・出典】
・新潟大学プレスリリース「子どものお口ぽかんの有病率を明らかに -全国疫学調査からみえた現代の新たな疾病-」(2021年)
・日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」
・みらいクリニック(今井一彰先生)「あいうべ体操」
・日本口腔筋機能療法学会

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